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「食堂かたつむり」著・小川糸

二日で読み終える。

面白い、ま、小説的ファンタジーな所はあるが、職業柄さらに料理を想い、好きになれる。
そこは食に関わる仕事でなくても共感できる部分は多いとおもう。

簡単なあらすじは、
男に全てを盗られ自分だけ捨てられた倫子(倫の字は不倫の倫と思っている)は、15歳で飛び出し10年間夢を追った東京を後に、実家のある田舎へ帰る。
残されたものは、料理のできる自分自身とヌカ床。
嫌悪する母に借金し、飼い豚エルメスの世話をしながら一日一組の食堂を開く。

もちろん、内容も面白いのだが、なにより、本は、ナゼその本と出合ったのかも重要だと思う。
この本になぜ、どんな経緯で至ったのか。
なぜ手にとったのか?

そのルーツを考えてみると人生のすべてがきっかけになっているようで面白い。
あの出来事も、あの時の不幸も、思い出したくない不運も、もし、この本に出会えて本当に幸せなら、今、考えるとすべての事がうまくいっているんじゃあないだろうか?と思うことができる。

この本は、最近出会ったある人との会話の中でポツン出てきたものなのだけど、なんだか大袈裟に考えると、すべて偶然で、正しいものをした気がする。

あたしの人生はやはり、出会いの人生だと思う。

それ無しでは生きて行けない。

「上州人、朴訥として、誠実なるを・・・」

といった、内村鑑三だったかの詩を、昔、父が書き、

「お前そのものだな」

といった事がある。

要するに、
「上州人は無知で不作法な田舎者だけれど、ただ誠実を持って人と接する事により、己の道を開く事ができる。」
といった詩である。

田舎に帰ってきてから、大事な出会いが少しずつ出来た。
良し悪し含めいろんな人と出合った。
人だけでなく、文化、教養、社会、そして今回の本といったたぐいまで、全て出会いの範疇。
その度に、一人前だろうとおもっていた自分の小ささを知り、少しずつ変わっていった。

まだまだ、出会いは続くだろうし、探していくだろう。
父の言葉を信じて。
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by under-heart | 2009-02-13 00:16 | beyond description

わたしの知ってる世界①

吾輩は坊ちゃんである。



まあ、いいとして。

旅館の長男坊として誕生当初から跡目の将来を期待されホクホクと大事に育てられました。

箸なんて持たなくてもお腹いっぱいの生活でした。
御曹司を前にすれば、社員すべてが笑顔で接し、ご機嫌を取り、勝手を認めました。

好きなものだけ、楽なことだけ、思うとおりに。

幼稚園から離れた観光地に実家があったため、送り迎えの後では友人と泥にまみれる事も少なく、小学校二年の時にはキャッチボール一つできないデブができあがっていました。

そんなデブを見かねた父親は、デブにグローブを買って与え、地元の少年ソフトボールチームへ誘いました。

デブはグローブを嬉しがり、ひたすらワックスを塗り続け、テッカテカのグローブを持つ汗まみれのデブは意気揚揚と自転車で運動場へと風を切りました。

いいか、デブ、いくらテッカテカでもソフトボールがうまくいくわけねーんだからな?

なんて事、デブが気が付くはずかねーのです。

それまで顔を出さずにいたソフトボールチームの面々となかなか馴染めずに、キャッチボールやウォーミングアップの時間に、また、グローブを磨く、なぜか汗をかいているデブ。

しかし、ゲームの時間になれば人数の不在により、いくぜ!!デブ!お呼びだぜべいべー!
ライトの最終打者はお前のもんだぜ!土付かずのグローブもって、しまっていこうぜ!

わかってるじゃねえか、デブ!そうさ、空いてる時間は、ひたすら隣のヤツからルールを聞いておけよ?打ったらな?ベースの上を走るんだ。打ったら、走る。打つ。走る。これでいいんだ。大丈夫、ライトに球は飛んでいかねーよ、取るなんて仕事は考えるな、大事なグローブ、汚れやしねえよ。

おい!大丈夫か?次だぜ!お前の順番?
バット持つ手が逆なんだよ!しょうがねえよ!持ったことねえもんな、バットも箸も小銭もよ!

大丈夫、みんなの声聞いてみろ。

「振るな」「よく見ろ」

そうだ!いいぞ!!よく見た!!!うごくな!!!!

グッジョブだ!フォアボールで累進!いいから、進んどけよ!お前の人生と一緒さ!
何もしなくても進めるんだよ、お前みてえなやつはね。

さあ、次の野郎がバッターボックスに入ったぜ!
ヤツは先頭バッターだ!ガキのゲームの先頭打者ってのは、イカした野郎が出てくるもんさ!
ヒーローのポジションなんだよ!

お!野郎打ち上げやがった!

デブ!走る!

それはセカンドフライだ!

お前はセカンドに走る!

打ったから、走る!

周りの声は聞こえない、必死だぜお前!!

ゲッツー。

なにがなんだか解ってねえんだな、残念だぜ。

しょうがねえよな、バットさえ持った事がない、初心者だもんな。


でも、お前が本当に持った事がねえのは、バットや箸や小銭じゃなくて・・・・・・。


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by under-heart | 2009-02-04 01:28 | beyond description
 この仕事の話をくれたのは実は製作会社の友人Mではない。
 もともとはMがシナリオライターを目指す友人Uへ発注した依頼だった。ややこしいのだが、ここでまたIという人間が出てくる。「あたし」も「M」も「U」も「I」も全員同じ大学の研究室である。が、Mがシナリオを頼んだのはUとIである。なぜなら、あたしは研究室にあまり顔を出さず、文句ばかり垂れていたので近付き易くはなかったのかもしれない。

 しかし、この「U」という男は人一倍人見知りで出不精、仲の良い大学の友人は前述の「I」一人しかいないくせにあたしにだけは興味を持ち、180を越える身長の上から「遊んで下さいよ」とあたしの頭上でぶつぶつ言い下ろしてきた。その為に学生時代の後半にはよく遊びに連れて行ったのだが、と、言っても、東京の街をひたすら連れ回しただけだった。ところがこの男は、始終ポケットに手を突っ込み、ラバーソールを履き、「疲れた」と高い所から文句を言いながらも懲りずに付いて来ては、飲めない酒を一生懸命練習するつもりで強がりながら、顔を青ざめ、あたしに付き合っていた。

「M君から連絡あったんスよ、僕とIに。でも会社的には若いヤツのシナリオは数がいくらあってもよさそうだと思うんで、下心さんもどうスか?ギャラは僕とIが貰ったやつを三分割すれば文句ないと思いますし、勝ったモン勝ちの企画だし、一緒にやりましょうよ」

 これが初めての仕事だった。

 そのMからの電話。
「だって、バレエなんて知らないっすよ、ぜんぜん書けないっす。ギャラはIと分けて下さい」
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by under-heart | 2007-01-18 20:26 | beyond description

スモモ飴  ⑤話

 バレエを始めたのは、幼稚園くらいの時かな。よくあるお稽古事の一つでお母さんが習わせてくれてたの。ああいうのってお母さんが自分の時間を作りたいから習わせるみたいでさぁ。ウチでも家の中で私がうろうろ騒がしかったから教室通わせたんだって。
 もともと動くのは好きだったみたいだから結構楽しくやってたんだけどさぁ、中学生くらいになってくるとだんだんレッスンもキツくなるし、その頃だともうある程度のレベルっていうか、都内からいろんな人が集まってくるトコに行き始めるのね?やっぱり、そうなると、いるんだよねぇ。背が高くって、手足が長くて細くて、いかにもバレエ向きの身体してて、本当に上手い子が。
 その頃ってやっぱり、女の子って丸くなる時期だから、私も少し太り始めたのね。それでそういう人見てたり、レッスンが厳しかったりすると、あー、向いてないのかもなぁ?って思いはじめてさぁ。だから高校に入った時からバレエやめて、ジャズダンス始めたの。
 そうしたらまた面白くなったんだけど、でもそれも高二までで、うーん、私が行ってた高校って武蔵(有名進学校)でしょ?受験期になると回りの会話内容が「滑り止めは青学か法政、でも行きたくない」みたいな、今から思うとすっごく嫌な会話なんだけど、そういうのが当たり前だったから、学校で部活のテニスもやってたし、ぜんぜん成績悪くって、受験の為にダンス辞めて、テニスも辞めたんだけど、それがいけなかったみたいでさぁ。
 ずっとバレエとかのダンス続けてたから、そういうのがいっぺんになくなっちゃうとさぁ、勉強すればいいんだけど、なんか身になんないんだよねぇ。なにしてても中途半端っていうか、学校おわるじゃんか?家に帰るんだけど、机に突っ伏しちゃうし、予備校行ってみてもなんか写すだけだし、息抜きで遊ぶ遊び方もあんまりしらなくって、友達も学校より教室の方が多いくらいだったから、落ちて落ちて、鬱気味だったのかなぁ?わかんないけど、浪人しちゃったんだよね。
 さすがに浪人したら大学受かったけど、一年間、あんまり明るい思い出はないよねぇ。ずっと机に座って下向いてたみたいな感じで。でも、受かった頃に「またダンスやらない?」ってジャズダンスの前の先生から誘われて、その時に初めて褒められて嬉しかったっていうか、「あなたは人より身体が柔らかいんだからこのまま辞めるのはもったいない」とか言われて、春休みあたりから早速やってみたんだけど、もちろん身体は動かないんさぁ、だけど、すっごく面白くって、右手が上がるとか、足が曲がるとか、当たり前の動きが楽しくってしょうがなくなっちゃって、バイトして、通い詰めてさぁ、また、大学始まっても、友達が少なくなっちゃったかも。なんつてね。てか、こんな話でいいの?参考になってるの?

 バレエというものは基本的に内から外へ向かう「アン・ドゥオール」の舞踊。外へ外へと大きく広く。
 身体が柔らかいという長所は身体の軸が定まり辛いという短所も持ち合わせている。しかし軸を定めたその演技は不思議な程軽やかで、停止した瞬間の表現力に輝きを増す。
 内向的ゆえに軸が定まらず、ふらふらと人生を歩き、彷徨ってしまう。
 だんだんと主人公の人格がイメージされてくる。
 そして、好きなモノには距離を置いた方が良い。本当に好きなものや身体の中に染み付いているものは時間の風化や浸食さえ寄せ付けないのだから。

 バレエって全ての踊りの基礎になるからさぁ、ジャズダンスを中心にやってるんだけどね、今はバレエも週一か二で行ってるんさぁ。昔は嫌だったんだよね、スタイル良い子の前で注意されたり、ソロで躍らせてもらえなかったり。でも、そのやっかみみたいなのはスタイルとかのせいじゃなくて、やっぱりその子の方が上手いからって思ったら、それも当然かなぁって。そしたらね、一年後だけど、バレエでプリマ(主役女優)やらしてもらえるって!「ジゼル」で!

 そんな取材をしている最中に一本の電話。
「下心さん、僕もうこれ無理っス、限界っす。こんなんで書けませんよ。ギブしそうです」


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by under-heart | 2007-01-17 23:48 | beyond description

スモモ飴  ④話

「いやいやいや、お前、何言ってんだよ?俺は英語得意だよ?ぺらぺら喋りますよ、そんなん」
「え?嘘?初耳、ほんと?」
「何年コンビ組んでんの?頼みますよ、ホント」
「ああ、ごめん。じゃあ、今から言う事英語に直せる?」
「当たり前でしょ、はい、はい」
「じゃ、じゃあ、『医者』!」
「ドクター!」
「そう!そうそう、次、『先生』!」
「ティーチャー!」
「いいねいいね、発音いいね!次!難しい、不動産屋!」
「ヒューザー!」
「ばか!違うよ!嫌だよそんなの」
「ヒュー、ザー?」
「うるさいよ、お前は!」

 気付けばあたし達は浅草演芸場にて初笑いをしていた。
 「ロケット団」という新人漫才師がお気に入りだった。
 正月の寄席は忙しい。一人の持ち時間が5分から10分ホドしかなく、入れ替わり立ち代り、様々な芸人さんが新年の挨拶と芸を披露する。中には、連日飲み明かしの為か、ふらふらしながら話す落語家さんもいた。

 プレゼントを無くしてしまったあたしは、
「あのさあ、もう一回浅香光代行こうよ、ね?おねがい」
 と、光代に十分すぎるほどの関心を寄せ、「えー?なんでー?好きだねー、光代」と笑われながらさりげなくビル内を探そうとしたが、やはりビル内の人に袋の見覚えを尋ねるしかなく、
「すいませんが、このくらいの黒い袋、このあたりに忘れてありませんでしたか?」
 明らかに怪しい質問の仕方だが事実これ以上の説明の仕様が無い。
 あの娘はこの質問で大体の状況は掴めたらしく、
「大変じゃん!何が入ってたの?あの袋?」
「んー、ちょっとしたもの」
 あたしはこの手の嘘が下手で、すぐ顔に出てしまう。
「なるほど」
 あ、ばれた。 

 正月早々遅刻なんてするもんじゃない。一年の計は穴だらけ。大吉なんてものも信用ならない。またもや機嫌が怪しい色を帯びてきているんじゃあないかと心配していると、
「あ!あの時じゃない?甘酒のテント?早くいこ!」
 と、意外と状況を楽しんで。
 日が陰りはじめる中を寒がりながら元来た道を戻り歩いて、甘酒屋には忘れ物は無かった。
「猿だね、猿だよきっと」
 と、猿回しの場に置き忘れてのではないかと、あの娘とまた歩き探してみたものの、見つかる事は無かった。贈る側としても「もういいよ、あきらめよう」とは言いずらいし、贈られる側としても「残念だったね」とも言いずらい。なんとなく二人、
「あ~ぁ」
 な雰囲気なのだが、諸悪の根源はあたしの方なので、今日何回目かの「ごめん」。「じゃあまたりんご飴だね」と、微笑まれ、促される。「えー?なんでー?好きだねー、りんご飴」
「見た目からね、りんご飴はさぁ、見た目がすごくよくない?真っ赤なりんごの周りを水晶みたいに飴が包むでしょ?一番綺麗なお菓子じゃない?お祭りとかに連れて行ってもらってた頃に、すごく憧れて食べたんだけどさぁ、見た目の印象が強過ぎて、味も少し神秘的になる様な気がするもんでさぁ。昔って、大きくて、食べるのが嬉しくなるほど大変だったけどさあ、今手にとると結構小さなもんだよね。りんご小さい!みたいな」

 小学生六年生が一年生の机を見て、感じるような、当たり前の事。当たり前の事をすごく繊細に感動できる娘だった。

 なんとなくほっとしていると、タイミング悪い事にりんご飴屋が店を畳み始めている。
「あははは、今日、いいトコないねぇ!」
 寄席だ。沽券復活は、寄席だな。寄席なら間違えない、寄席なら面白い!半ばヤケで。

「去年は、エロ可愛いとか、キモ可愛いとかいろいろ出てきましたよね」
「僕たちも今年はなにかそんなキャッチコピーみたいの作れば、売れちゃうんじゃない?!」
「すばらしい、よく気が付いた。お前にぴったりの、ありますよ」
「え?なに?なに?」
「エロキモい」
「駄目だよ、そんなん!売れないよ!」
「見てください!この、エッロキモい顔!」
「おい!」

 よし、笑ってら。


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by under-heart | 2007-01-16 19:48 | beyond description

スモモ飴  ③話

 今でもしっかりと覚えているのだが、去年のクリスマスはイヴが土曜日のクリスマスが日曜日だった。なぜならあたしは仕事をみっちりしていたのだから、こっそりと地方のビジネスホテルで。

 あの娘も土日はアルバイトをしていた為、クリスマスは家族とひっそりと過ごしたそうだ。

 約束をしてから一ヶ月、あたし達は会わなかったが、用もないのに少しずつ連絡を取り合う様になり、どちらともなくクリスマスにプレゼント交換をする約束をイレギュラーに結んだ。お互いが仕事で会えないであろうことを分かりながらも、目をつむり。
 やっぱり会えないねえ、なんて当然な事をさも残念がりながら、じゃあ交換は初詣の時に持ち越そう。という事であたしは今日のこの日の為に、ここ数年、考えた事のなかった「プレゼント」の中身を考えに考え、練りに練り、そう、断っておくが、あたしはこの様な時に雑誌などというチャチなものには頼らない。想像力と想定力をフルに使い、身体全身で考える。当然ながら、貰って嬉しかろうモノ。その上、驚きを含み、あたしを意識させるるときめきを与え、かつ好意を伝え、いやらしくない。そうなるともちろん品のあるクオリティーが求められる。そして最後の条件に、貰ってもらった時に、あたしが嬉しくなる様なもの。つまり、そのプレゼントを渡す事自体を楽しめるか?

 知恵熱で倒れる寸でのところであたしは吉祥寺の伊勢丹に入り、やっと納得の行くプレゼントに出会い、この日を待ちに待ち、待ち合わせ時や一緒にいる時にもなるべく見つかるまいと、プレゼントのブランド袋をディスクユニオンの黒い袋の中に隠し、大事に抱えていたのだが、気が付くと無いんですよねー、浅香光代ビルを出たあたりで気が付いたんですがねー。置き忘れですねー、これは。間違いなく。

→ 
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by under-heart | 2007-01-15 23:32 | beyond description

スモモ飴  ②話

 仕事の話を頂いたのは10月の下旬だった。
 映画制作会社に勤める大学の友人M君と新宿の路上で企画書を頂いて、少し打ち合わせした。
 仕事内容はといえば、
「会社内である企画(映画の原案)が持ち上がった。その企画を元にシナリオライターを数人使用し、競わせる形でアイディアを募る。出来の良いものがあれば、そこから打ち合わせ、形にしてゆく」
 締め切りは十一月下旬。
 時間がなさ過ぎるのは分かった上で、乗るか反るか?給金なんてパチンコで10分もあれば飲み込まれてしまう程度だが、一ヶ月、勝負してやろうと思った。

 浅草の浅草寺はさすが正月の五日になっても人であふれていた。
 あたし達は浅草観光客の例に倣ったように、お土産屋のハッピや鬘に騒ぎ、無数のおせんべい屋の前を「美味しそう」と言いながら買わず、揚げ饅頭を食べ、ありがたい煙を頭や顔にたっぷりとかけて、境内に入った。
 例に倣い、二人とも一年の幸福をお願いする。こんな時にしか拝まない神様なのだけど、こういう日本人の行動は身体の中に染み付いてしまっているらしく、他力本願だろうが、ずうずうしかろうが、あたし達は買う、たった五円で幸せを買う。

 それから辺りを散歩すると、猿回しが猿をまわしている為に人だかりができている。
 戌年の頭に犬猿の仲の猿を見世物にするとは太い根性だと感心し、見入っていると、あたしもあの娘も曲芸を見るのが初めてだったから、喜び騒いで気付けば30分も経ってしまった。
 このあたりになるとすっかり「遅刻」の件は忘れてしまっているようで、やはり女の子はこうであって欲しいと思った。ご利益、ご利益。
 冷えた身体を温めようとテント小屋のような出店の中で甘酒を頂き、再び浅草の街を縦横にあるいていると、なんだか眼前に「浅香光代」と大きく書かれた大きなビルが建っていたので、大きな魅力を感じ、お邪魔させてもらった。
 なんの事はない、雷おこしを進められ、食べさせてもらっただけだったが。

 ところで、勇み原稿に取り掛かったのだが、この「パレエ」の企画が困ったことになっている。
 企画力が貧弱すぎるのである。友人Mに再び連絡を取り、この企画の趣旨と原点を今一度詳しくたずねると、以下の理由から立ち上がった企画らしい。

 答え
1 最近バレエが流行っている。
2 最近某有名大御所女優がテレビに映ると視聴率が上がる。
3 少林サッカーって面白いよね。
 以上の条件より、某有名大御所女優を主役に使ったバレエの物語を少林サッカーの様にCGを使ったぶっ飛びコメディーに仕上げる事は、良い作品になる必要条件を満たす。
 よって、この企画の立案が証明される。

 あんちょくぅ~。

 このような疎漏なアイディアで各々のシナリオライターに投げっぱなしにしてみる態度は、太っ腹としかいいようがないが、とにかく頂いた方は企画案に乗せてある仮プロットを見て、

「  主人公、悪者に追われ、捕まりそうになる
   肩に手が掛かる瞬間、足を上げ振り払ったかと思うと、
   主人公『あんたたち、なにすんのよぅ!』 
   そのままバレエを踊り、回りはじめる。
   高速回転から繰り出す蹴りで悪者を一蹴し、竜巻を起こす  」

 唖然。
「条件だけ満たしてくれたら、後は自由に書いてもらって結構だから。あ!そうそう、視聴者層におばさんを取り込みたいかぁさぁ、どこかで韓国俳優入れといて、じゃ」

 この製作会社、一昨年前に人気漫画の映画化に携わり大ヒットをさせた。
 こういう企画も行動力旺盛なる仕事姿勢のひとつなのかもしれないが、いかんせん、ド素人のあたしが見るかぎり、どうもバレエや映画を舐めてる様にしか見えない。
 駆け出しの新人であるし、こんな大きな会社に声を掛けて頂いただけでもありがたく、プライドのプの字すら持ち合わせないつもりだったが、この企画通りではイカン。
 怒りがこみ上げるあたしのシナリオの決定方針では全く条件を無視し、リアルなバレエの人間ドラマを描く。この企画会社にバレエの本当の魅力を叩きつけ、少しでも考えを改めさせてやろう。ツテで貰ったお情けの仕事だ、駄目でもともと、刺し違える覚悟で噛み付いてやろうじゃねえか。・・・ところで、

 バレエってなんだ?


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by under-heart | 2007-01-14 11:16 | beyond description

スモモ飴  ①話

 待ち合わせは午後の一時に浅草の雷門前だったのだけれども、その日もあたしは遅刻で三十分待人を待たせてしまった。

 その娘と初めて会ったのは、あたしが大学を卒業して初めて、友人のツテからシナリオの仕事を頂いた時、題材の「バレエ」について調べあげる中で、学生ダンサーとして知人に紹介してもらった時だった。

 それは取材だった。

 舞踏の世界を何も知らないあたしにとって、バレエのシナリオを書く事は本当に「0」からのスタートだったから、何十冊と本を読み漁り、レッスンを見学させてもらい、自らの想像力で構築されたそれらを実感するために経験者との対談がしたかった。

 遅刻が常習だったけど、これまでの遅刻には仕事上の理由があったりして大目にみてもらっていたのだが、今回ばかりは取材ではなく、二人で初詣に行こうと決めた最初の「待ち合わせ」としてだった。
 去年の一月五日。
 雷門の前でご立腹だった。
 前日の夜中まで、年越しを含めアルバイトが一週間近く続き、全て14時間労働だった為、疲れ果ててしまい、少し寝坊してしまった。自分にとっても今年初めての休みと参拝なのだから、一年の計としても少々まずい。

 明るく振舞い、機嫌をなだめ、目抜き通りを進むところでおみくじがあったので、注意を促し二人でおみくじいてみたのだが、こういう時ばかりにあたしが「大吉」でこの娘は「凶」
 冗談じゃないぜ、なんて思っても事実出てしまったんだから仕方がない。遅刻なんてするもんじゃない。
 ますます機嫌が悪いあの娘に、
「俺と君のおみくじを交換するね?そして俺がこの『凶』おみくじを結ぶ、で、君が『大吉』をむ結ぶ。君は当然浅草の神様に大吉を結んだのだから縁起がいい。俺としても、大吉を引いた福を持って凶を大吉と取り替えかえてあげることは、神様の前でひとつ徳を積んだ事になるから縁起が良い」
 なんていう出鱈目な理屈でなんとか機嫌を取ると、遅刻に関してはりんご飴屋でスモモ飴をおごらされる事でチャラにしてくれた。大吉もまんざらではない。

 この娘は吉祥寺にある大学に通い、休日はアルバイトに励み、そのお給料のほとんどをレッスンのチケット代に変えてしまう苦労をしていたから、取材としては身の在る話を聞けたが、取材が終わるとお互いが忙しく会う時間はない。
 出来上がった作品を手渡した十一月の終わりに、
「じゃあ、初詣でもいこうか?」
 なんていうあたしの必死の冗談が現実となり、正月を五日も過ぎてこの日を迎えられたのだから、あたしは遅刻なんてしている場合ではなかった。


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by under-heart | 2007-01-13 23:14 | beyond description

リリー

「クンニだよ、クンニ。クンニが足りねぇに決まってるじゃん」

大学の卒業式の懇親会場の中、今日の悲しさと照れ隠しに酔いが手伝い、一際大きな声を張り上げて友人Kが叫んだ。

それは彼女と美味くいかなくなってしまった友人Sに向かっての誠心誠意を込めたアドバイスのつもりだった。

「え?そんなん当たり前じゃん?Sはクンニしないんでしょ?クンニしないから駄目なんだよ。長いやつ。女はそれで幸せ感じんじゃん。ねぇ、Hちゃん(♀)?」

なんとなくその言葉に説得力があったのは、Kが童貞だったからだ。
童貞がする性の話は力強い。想像力が経験を黙らせる。
みんな否定する訳でもなく、否定出来る訳でもなく、所在なさげに視線を迷わせ、
「クンニだな、S、クンニだよ」
と、話が纏まっていった。

「クンニか、なぁ・・・」

Sは説得されていた。
だいぶスペシャルな飲み込まれ方だと思う。

後日、その友人Kに尋ねた。
僕「なんでクンニなん?なんでお前が知ってるん?分かるん?」
K「ああ、リリー・フランキーが言ってたから」

至極、うすっぺらく、大笑いした。


リリー・フランキーの名前と存在は知ってはいたが、意識したのはその時からだった。

『友人とキャンプに出かけた時の事。
大荒れの天気に見舞われ、洪水で危険極まりない川に飛び込んだ。
死んだら俺はここまでのヤツなんだ』
この様な冒頭文の本をかじった事がある他、それまでは、
「エロエッセイを書く人」
との認識しかあらず、吉祥寺のスミっこの店でサインを見つけたくらいだった。



それから約一年後、僕が東京で出会った一番綺麗な人と最後の食事をした。
「『東京タワー』読んだ?
あたし、一昨日全部読み終わったんだけど、電車の中で涙が止まらなくって。
その話、会社でしたらみんなに笑われちゃった。
でも、すごく良い本だったの」

ああ、リリーフランキーの。
と思い、なんだか悔しいから読む気にならなかった。


それからしばらく、その「東京タワー」が今とても売れている。

読者層は20代から30代の方が多く、特に自立して一人で暮らしている方には感銘を強く与えているらしい。
「東京タワー症候群」などと言って、一人暮らしから実家に帰り、家族と暮らす事を決める若い人達の流れも増えているらしい。

この話は、主人公「ボク」と母親「オカン」を中心にした「家族」の物語。
と、共に、

主人公「ボク」の母親「オカン」に対する情けない物語。
情けないことは悪いことじゃない。
当たり前のこと。

先日、テレビでも放送されていた。
放送前に妹から、
「このドラマ面白いかなぁ?」
「本、読まなきゃ駄目だろう。本読んで感動出来ないと、テレビ見ても本当の事が読み取れない気がするよ?」

そんな事を言ったなぁ、なんて思いながら、ウチの町の図書館でたまたま「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」を見つけた。
「時々オトンって・・・」
ダサい名前だな。



僕は父親を失っていた。

時代が求める時に応える作家は出てくるものなんだ。
この作品を読んでそんな事を思った。
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by under-heart | 2006-12-02 21:35 | at a loss

ブログの森の満開の下

目が覚め、再びブログ更新を始める訳で。

ネット環境上という広く開けた文化の中で、ここ10日近く訪問者が訪れぬ、深い山村のようなこのページ上で。

一人で花見をするように、ひっそりと、だだ、ぽそぽそと、花びらが散るように魂が散って命がだんだん衰えていくように。

「なぜブログを書くのかえ?」
「約束があるからだよ」
「ブログと約束したのかえ?」
「ブログの下には冷たい風がはりつめているからだよ」
「ブログの下にかえ?」
「ブログの下は涯がないからだよ」
あたしは分からなくなってクシャクシャしました。
「私にもブログを書かせておくれ」
「それは、だめだ。一人でなくちゃだめなんだ」

そこでなぜブログなのか、ひとつ、明日、考えてやろう。
今日は考える気がしないのです。
そして明日、更新したら、そのときじっっくり考えようと思いました。毎日、そう考えて、もう、何日もたち、今日もまた、明日になったら更新してやろうと思って、また、日が暮れてしまいました。

そして、昨日、思い切ってブログを更新してみました。だんだん気が変になり、怖しさで盲滅法たまらなくなりました。今日はひとつ、ジッと動かずに、いや、思い切って地べたにすわって考えてやろう。

このところブログ更新が遅れたのは・・・
①多忙の為、精神に支障が訪れ、「新庄剛志(日本ハムファイターズ所属)とロックバンドを組む」と北へ向かってしまった。
②多忙の為、精神に支障が訪れ、「松山千春(北海道所属 新党大地の名付け親)とパンクバンドを組む」と北へ向かってしまった。
③多忙の為、精神に支障が訪れ、「金正日(チーム万景峰号代表 美女軍団所持)とヘビメタバンドを組む」と北へ渡ってしまった。
④多忙だった。
の、どれかだろう。

まさか、ブログが気になって気になって、日に何回も訪問数を確認し、人数の少ないときには自らの携帯電話から訪問し、増える数字に「えへへ」
まさか、このあたしが、あたしに限って、ブログ如きに振り回されるなんて!ちくしょう、こんちくしょう!そんな自分に気付き、冷静に距離を置くことにするわ・・。でも、やっぱり・・。
なんて、化粧も小慣れたOLが火遊びのつもりで手を出してみた社内不倫みたいなわけでは決して、

無いんじゃないすか?

下敷き
桜の森の満開の下」著 坂口安吾
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by under-heart | 2006-09-29 17:52 | beyond description