「いや~ん、
だから言ってるじゃないのォ、あたしは何にも欲しいものなんか無いのよォ、ねぇ?わかってぇ?ただね、あたしのね、ママがねぇ?こないだも言ったでしょう?今ねぇ、病気で寝たきりなのぉ?アタチねぇ?仕事が終わると、ずーっとママの看病してて、寝る暇もないのぉ?わかってぇ?今のアタチのたった一人の家族なのよぉ?今も一人で、寒い病室で咳きをしてるわぁ・・。ううん、違うの、泣いてないの。そのママがねぇ?たまに、うわ言の様に言うのよ?ねぇ?
『私の昔の憧れの女優はね、ジェーン・バーキンとグレース・ケリーなのよ・・』
・・映画好きなママなのよ。そんなママにどうしてもプレゼントを贈りたいんだけど、何を贈っていいかわからないし、ママの入院費で精一杯の暮らしだし・・。ううん、違うの、泣いてない、でも、ちょっと、ごめんなさい・・。ねぇ?わかってぇ?ね?・・わかった?嬉しい!・・あ!はーい!ごめんなさい、指名入っちゃったのぉ。また来るからねぇ?ゆっくりしててねぇ」
「ありがと~う!こないだねぇ、ママぁ、すっごく喜んでてねぇ?病室の目の届くところにいつも置いててねぇ?看護婦さんにバッグを褒められる度に『娘のいい人にプレゼントして貰ったんです』なんてぇ、言ってるのよぉ?もお、ママったら、気が早いのぉ。わかるぅ?いや~ん、ちょっと、照れるわぁ!・・・ハァ、でもねぇ?昨日からママねぇ、ううん?ごめん、なんでもないの。こっちの事だから、・・ハァ、ごめんね。・・・ハァ。・・・ハァ。・・え?話してって・・。でも・・、せっかくなのに、悪いわよぉ、こんな話。・・そう?・・あのね、ママね、昨日から熱が下がらなくってぇ、それでね、アタチに言うのよぉ?ねぇ?わかってぇ?ずっと病院で寝たきりでしょう?だから、また、外に出てみたいわって、遠い目をしながら、弱弱しく言うのよぉ・・、ごめん、シクシク。それでも、あたしはどうする事も出来ないじゃない?せめて、車があればとは思ってもね、あたしにはそんな力は無いのよ・・、ねぇ?シクシク。アタチはママの為に車一つ買えないのよぉ?そんな事をねぇ、思うと、ねぇ?わかってぇ?あたしって、惨めよねぇ、そしてさぁ?情けない女なのよぉ、シクシク、シクシク。もうダメだ、あたし、田舎に帰ろう。田舎に帰って、ママと二人、誰もいないところで、ひっそりと、二人で、誰にも気付かれず、ひっそりと、・・え?わかった?本当にわかったの?え?嬉しい!あ!はーい!じゃ、ごめーん!指名入っちゃった。まったねー!」
「ああー!久しぶりぃ~!どうしたのぉ?納車の時以来じゃない?待ってたのぉ~よぉ~。もう!寂しかったのよぅ!わかるぅ?・・あれ?どうしたのぉ?ちょっとやつれたのぉ?元気ないねぇ?あれから車はチョ~調子いいのよぉ?えっとねぇ、箱根でしょう?草津でしょう?鬼怒川でしょう?下呂も、え?そ、そう?そうそう、だって、お母さん温泉好きだから!大丈夫、大丈夫、病は気からっていうじゃない?ねぇ?車が来たら随分気が強くなってねぇ?しかも、生きてるウチに、早くアタチのいい人に会ってみたい。お礼を言わなくちゃ、って、早く会わせろ会わせろって、うるさいのよぉ?ねぇ?わかるぅ?いや~ん!・・え?でもね、ほら、あたしも昼間看病とか家の掃除とか、ゴミ捨てとか、いろいろ忙しいから、その内、ね?わかってぇ?ねぇ?だから、会えないのよ?ね?会えないの。元気よ?たしかにね、元気なのよ?昨日までは・・。
昨日までは・・。ねぇ?昨日までは、の、話なのよぉ・・?・・ハァ。・・・ハァ。・・・・・ハァ。・・・今日は何も聞いてくれないのねぇ?ううん。いいの、わかってるの、アタチは店員であなたはお客様だもの。大切な、大切な、お・きゃ・く・さ・ま、だもの。そんな話は迷惑だって事、ごめんね、アタチのたった一人のママだから、ちょっと、寂しかっただけなの。わかってぇ?だけど、その寂しさを話せる相手はあなたしかいなかったのねぇ・・。ごめんね、結局、他人だもんね、アタチの早とちりよ。ルール違反よねぇ、ごめんね。わかってぇ?もう。言わないから。ね?ごめんねぇ?わかってぇ?ごめんねぇ?・・・え?聞く?話?聞く?え?ほんと?聞く?聞くのねぇ?
そうなの!アタチのママが昨日からねぇ?危篤なのよぉ?それで、アタチの手を握って言うのよぉ?かすかな声でいうのよぉ?ねぇ?わかってぇ?
『一度だけでいい、また、あんたと、二人で、自分たちの家に、家に、「家」に、・・・いや、「マンション」でもいい。で、暮らしたかったぁ・・』
でも、そんなこと無理だわー!あたしになんか、絶対無理だわー!うわーん!うわーん!これでこのまま、ママを失ったらもう生きていけなーい!うわーん!わかるぅ?今でさえ、看護疲れとこんな生活にもう、生きてる意味なんて解らないし、ママだけが支えなの。その、ママが、その、ママが、うわーん!無理だわー!わかってぇ?マンションなんて、無理だわー!え?何よ?いいの、まわりが見てようが何されようが、アタチの話を聞いたあなたのところで大声で泣きたいの。うわーん、うわーん、うわーん、うわーん!家、家、お家ー!うわーん!・・ええ!わかったぁ!ついに解ったのねぇ!うれしーい!!」
『帯も出来たし箪笥もできた そろそろ旦那と別れよか』
「ええとねぇ、今度はねぇ、ママがねぇ、南の島でねぇ・・。え?何?電話ですか?はい。ちょっとごめんなさい・・・」
「なんね?オカンかね?仕事中に電話ばしたらあかん言っとろうがね!元気じゃちゅうに!オカンも元気かえ?そうじゃろーも、聞いとらんがね、そんなこと。え?今度、買う、健康器具?通販?ロデオボーイ?そんな効果しらんがね!少しはおとなしか出来んかね!帰るっちゃ、年末ね・・、帰る言うとろーも!・・」
だから言ってるじゃないのォ、あたしは何にも欲しいものなんか無いのよォ、ねぇ?わかってぇ?ただね、あたしのね、ママがねぇ?こないだも言ったでしょう?今ねぇ、病気で寝たきりなのぉ?アタチねぇ?仕事が終わると、ずーっとママの看病してて、寝る暇もないのぉ?わかってぇ?今のアタチのたった一人の家族なのよぉ?今も一人で、寒い病室で咳きをしてるわぁ・・。ううん、違うの、泣いてないの。そのママがねぇ?たまに、うわ言の様に言うのよ?ねぇ?
『私の昔の憧れの女優はね、ジェーン・バーキンとグレース・ケリーなのよ・・』
・・映画好きなママなのよ。そんなママにどうしてもプレゼントを贈りたいんだけど、何を贈っていいかわからないし、ママの入院費で精一杯の暮らしだし・・。ううん、違うの、泣いてない、でも、ちょっと、ごめんなさい・・。ねぇ?わかってぇ?ね?・・わかった?嬉しい!・・あ!はーい!ごめんなさい、指名入っちゃったのぉ。また来るからねぇ?ゆっくりしててねぇ」
「ありがと~う!こないだねぇ、ママぁ、すっごく喜んでてねぇ?病室の目の届くところにいつも置いててねぇ?看護婦さんにバッグを褒められる度に『娘のいい人にプレゼントして貰ったんです』なんてぇ、言ってるのよぉ?もお、ママったら、気が早いのぉ。わかるぅ?いや~ん、ちょっと、照れるわぁ!・・・ハァ、でもねぇ?昨日からママねぇ、ううん?ごめん、なんでもないの。こっちの事だから、・・ハァ、ごめんね。・・・ハァ。・・・ハァ。・・え?話してって・・。でも・・、せっかくなのに、悪いわよぉ、こんな話。・・そう?・・あのね、ママね、昨日から熱が下がらなくってぇ、それでね、アタチに言うのよぉ?ねぇ?わかってぇ?ずっと病院で寝たきりでしょう?だから、また、外に出てみたいわって、遠い目をしながら、弱弱しく言うのよぉ・・、ごめん、シクシク。それでも、あたしはどうする事も出来ないじゃない?せめて、車があればとは思ってもね、あたしにはそんな力は無いのよ・・、ねぇ?シクシク。アタチはママの為に車一つ買えないのよぉ?そんな事をねぇ、思うと、ねぇ?わかってぇ?あたしって、惨めよねぇ、そしてさぁ?情けない女なのよぉ、シクシク、シクシク。もうダメだ、あたし、田舎に帰ろう。田舎に帰って、ママと二人、誰もいないところで、ひっそりと、二人で、誰にも気付かれず、ひっそりと、・・え?わかった?本当にわかったの?え?嬉しい!あ!はーい!じゃ、ごめーん!指名入っちゃった。まったねー!」
「ああー!久しぶりぃ~!どうしたのぉ?納車の時以来じゃない?待ってたのぉ~よぉ~。もう!寂しかったのよぅ!わかるぅ?・・あれ?どうしたのぉ?ちょっとやつれたのぉ?元気ないねぇ?あれから車はチョ~調子いいのよぉ?えっとねぇ、箱根でしょう?草津でしょう?鬼怒川でしょう?下呂も、え?そ、そう?そうそう、だって、お母さん温泉好きだから!大丈夫、大丈夫、病は気からっていうじゃない?ねぇ?車が来たら随分気が強くなってねぇ?しかも、生きてるウチに、早くアタチのいい人に会ってみたい。お礼を言わなくちゃ、って、早く会わせろ会わせろって、うるさいのよぉ?ねぇ?わかるぅ?いや~ん!・・え?でもね、ほら、あたしも昼間看病とか家の掃除とか、ゴミ捨てとか、いろいろ忙しいから、その内、ね?わかってぇ?ねぇ?だから、会えないのよ?ね?会えないの。元気よ?たしかにね、元気なのよ?昨日までは・・。
昨日までは・・。ねぇ?昨日までは、の、話なのよぉ・・?・・ハァ。・・・ハァ。・・・・・ハァ。・・・今日は何も聞いてくれないのねぇ?ううん。いいの、わかってるの、アタチは店員であなたはお客様だもの。大切な、大切な、お・きゃ・く・さ・ま、だもの。そんな話は迷惑だって事、ごめんね、アタチのたった一人のママだから、ちょっと、寂しかっただけなの。わかってぇ?だけど、その寂しさを話せる相手はあなたしかいなかったのねぇ・・。ごめんね、結局、他人だもんね、アタチの早とちりよ。ルール違反よねぇ、ごめんね。わかってぇ?もう。言わないから。ね?ごめんねぇ?わかってぇ?ごめんねぇ?・・・え?聞く?話?聞く?え?ほんと?聞く?聞くのねぇ?
そうなの!アタチのママが昨日からねぇ?危篤なのよぉ?それで、アタチの手を握って言うのよぉ?かすかな声でいうのよぉ?ねぇ?わかってぇ?
『一度だけでいい、また、あんたと、二人で、自分たちの家に、家に、「家」に、・・・いや、「マンション」でもいい。で、暮らしたかったぁ・・』
でも、そんなこと無理だわー!あたしになんか、絶対無理だわー!うわーん!うわーん!これでこのまま、ママを失ったらもう生きていけなーい!うわーん!わかるぅ?今でさえ、看護疲れとこんな生活にもう、生きてる意味なんて解らないし、ママだけが支えなの。その、ママが、その、ママが、うわーん!無理だわー!わかってぇ?マンションなんて、無理だわー!え?何よ?いいの、まわりが見てようが何されようが、アタチの話を聞いたあなたのところで大声で泣きたいの。うわーん、うわーん、うわーん、うわーん!家、家、お家ー!うわーん!・・ええ!わかったぁ!ついに解ったのねぇ!うれしーい!!」
『帯も出来たし箪笥もできた そろそろ旦那と別れよか』
「ええとねぇ、今度はねぇ、ママがねぇ、南の島でねぇ・・。え?何?電話ですか?はい。ちょっとごめんなさい・・・」
「なんね?オカンかね?仕事中に電話ばしたらあかん言っとろうがね!元気じゃちゅうに!オカンも元気かえ?そうじゃろーも、聞いとらんがね、そんなこと。え?今度、買う、健康器具?通販?ロデオボーイ?そんな効果しらんがね!少しはおとなしか出来んかね!帰るっちゃ、年末ね・・、帰る言うとろーも!・・」
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by under-heart
| 2006-12-10 21:58
| beyond description