えへへへへ


by under-heart
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吉祥寺のゲーセンマスター

○自給
 860円
○業務内容
 昼寝。
 一時間半に一度5分程度の巡回。

そんなアルバイト紹介されたら二つ返事で希望しましたよ、学生のあたしは。
ゲームセンター内の店員として、お客に呼ばれた時のみ出動、後は人目に付かないカウンターで待機。勤務人数一人。
当時、演劇の台本や製作やら様々で忙しかったあたしはゲームセンターで既にアルバイトをしている友人(呼称・ジャイトニオ・イノバ)に紹介され、喜び勇んで面接を受け、採用してもらった。

「別に仕事なんか特にねーよ、座ってればいーんじゃん?」

嬉しすぎるほどに楽で条件の良いアルバイトであり、タバコの煙と騒音に我慢すれば自由そのものであるので、イノバとの二日の研修も終わり、一人で勤務を任されたあたしは必死にシナリオ作りにとりかかり、仕事の「し」の字も気にしなかった。

一週間が経つ頃、

怒られた。

「マスター」に。

(ここで「マスター」と言うのは「マスター・ヨーダ」的なものではなく「喫茶店」的なモノと理解していただきたい)

言い遅れたが、このゲーセンの勤務人数は三人で、あたし、イノバ、マスターで回している。ほぼフリーターであるマスターは午前中からの早番を、学生のあたしとイノバが午後の遅番を順々にと言った形で。
たまたまみんな同年代で、マスターはここのゲーセンオープン当時からいる古参であり、イノバはあたしが入る一年前くらいからアルバイトをしている。

ところで、怒られたあたしは意味がわからず、イノバに研修受けた通りの業務内容を以って反撃をしてみたが、少し考えると、

「おい!コラ!別に仕事しなくていいんだろ!!このバイトはよ!!あ?」

何言ってるんだ俺は?
給料貰っている上でこんな理論を盾に戦えるわけが無い。

そういえば誰がUFOキャッチャーの景品を入れ替えているんだろう?
灰皿を交換しているのだろう?
掃除をしているのだろう?
研修であたしに仕事を教えなかったイノバの野郎があたしの分まで綺麗に仕事をこなしているのだろうか?
いや、ありえない。
顔を上げマスターの怒り顔を見つめながら「なるほどね」と納得。
聞けばイノバ自体が大変なサボり癖があり、ほとんど仕事をこなさないらしい。
怒っても聞かないし、効かないのでマスターもほとほと困り果てているのだとか。
つまり、イノバが研修とサボったと考えるとツジツマが合う。

と、まあ、こんな調子で知り合いになったマスターとはそれ以来週3~4で顔を合わせる事になった。バイトの引継ぎ時に顔が合う訳だが、あたしがゲーセンに到着すると、このマスター、真冬以外は決まって半そでTシャツと野太いズボンを格闘家のような身体の上に乗せ、腕を組んで立っている。
引継ぎが終わり、帰るときになるとまた決まって、野太いズボンの足を広げ、ズボンの位置と金玉の位置を正し(機嫌がいいと、迷惑な事に「ほれ、この、玉の裏の一番汗をかく部分の・・」などと言い、パンツの中に手を入れた手をなすりつけようとするイタズラを催す)、上着を羽織り、サングラスを掛け、コンビニの80円パックのお茶に刺されたストローを勢い良く吸い上げ、最後の一口を飲み、右手を上げて出てゆく。

そしてあたしの記憶によれば、マスターは週3~4日で何かに怒っていた。

ギターにお熱を上げているこのマスターは所属していたバンドが解散となり(あたしはその解散ライブの様なものに行ってみると、「MATSUI・55」と書かれたヤンキーズのTシャツを着て、こてこてのハードロックを弾いていた)、携帯のサイトで新規メンバーを探し、愛するハードロックバンドの結成を企み、行動をしていたのだが、まず、釣れた魚は、

「マジカル・ビスケッツ」

というヴィジュアル系バンドのベース担当から。
ギターだけがいないという願ったりの状況なので、せっかくだから話だけでも、と会いに行ったマスターは次の日、
「三人とも足を組んで髪の毛を掻き揚げやがった」
と、格闘家の様な短髪漢は怒っていた。

「こんにちは。石田ですけど、バンド組みたいと思っています。よろしくお願いいたします」

と、いう意味不明のメールが一度送られて来た以来音信普通になってしまった「石田さん」にも怒っていたし、「今日、これから新しいバンド候補と会って来るんだよ」と言い帰った次の日は、

「そのボーカルのヤツの体型がボーリングのピンみてーなんだよ!しかも、禿げててよ!んで、ドラムの人が40歳くらいの社会人だから練習来れないとかぬかして、ベースのヤツなんか、オメェ、中国人だぜ?!「来年の三月に国に帰ります」って、4ヵ月後にいねぇんかい!!」

中には感触の良いメール内容もあって、「ハードロックを中心に曲を作っています。」そんなバンドがギターの抜けた穴を探していたので、マスターはウハウハでメールを返したのだが、加入内容に、

「髪、長いですか?」

「ウェーブかけろっちゅうんかい!こらぁ!!」
また怒っていた。

そして忘れた頃に、再びマジカルビスケッツから、今度はドラム担当から知らぬ顔でオファーを受け、ブチ切。

飲みに行った時も、
「関西のお笑いをなぁ!」と、東京の若者について怒り終えると、
「こないだ、この店でオタク連中が、美容師についてのコメントでよぉ!」
「友達に連れて行かれたライブイベントっつうのが、宗教の集会でよぉ!!」
「生まれてこの方アイスクリームしか食えねえし食った事がねえっつう、電波の女がいてだなぁ!でも可愛いんだ!もったいねぇ!」
と怒りシフト変幻自在に変えて怒っていた。
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by under-heart | 2007-03-23 18:05 | by the wey