えへへへへ


by under-heart
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スモモ飴  ④話

「いやいやいや、お前、何言ってんだよ?俺は英語得意だよ?ぺらぺら喋りますよ、そんなん」
「え?嘘?初耳、ほんと?」
「何年コンビ組んでんの?頼みますよ、ホント」
「ああ、ごめん。じゃあ、今から言う事英語に直せる?」
「当たり前でしょ、はい、はい」
「じゃ、じゃあ、『医者』!」
「ドクター!」
「そう!そうそう、次、『先生』!」
「ティーチャー!」
「いいねいいね、発音いいね!次!難しい、不動産屋!」
「ヒューザー!」
「ばか!違うよ!嫌だよそんなの」
「ヒュー、ザー?」
「うるさいよ、お前は!」

 気付けばあたし達は浅草演芸場にて初笑いをしていた。
 「ロケット団」という新人漫才師がお気に入りだった。
 正月の寄席は忙しい。一人の持ち時間が5分から10分ホドしかなく、入れ替わり立ち代り、様々な芸人さんが新年の挨拶と芸を披露する。中には、連日飲み明かしの為か、ふらふらしながら話す落語家さんもいた。

 プレゼントを無くしてしまったあたしは、
「あのさあ、もう一回浅香光代行こうよ、ね?おねがい」
 と、光代に十分すぎるほどの関心を寄せ、「えー?なんでー?好きだねー、光代」と笑われながらさりげなくビル内を探そうとしたが、やはりビル内の人に袋の見覚えを尋ねるしかなく、
「すいませんが、このくらいの黒い袋、このあたりに忘れてありませんでしたか?」
 明らかに怪しい質問の仕方だが事実これ以上の説明の仕様が無い。
 あの娘はこの質問で大体の状況は掴めたらしく、
「大変じゃん!何が入ってたの?あの袋?」
「んー、ちょっとしたもの」
 あたしはこの手の嘘が下手で、すぐ顔に出てしまう。
「なるほど」
 あ、ばれた。 

 正月早々遅刻なんてするもんじゃない。一年の計は穴だらけ。大吉なんてものも信用ならない。またもや機嫌が怪しい色を帯びてきているんじゃあないかと心配していると、
「あ!あの時じゃない?甘酒のテント?早くいこ!」
 と、意外と状況を楽しんで。
 日が陰りはじめる中を寒がりながら元来た道を戻り歩いて、甘酒屋には忘れ物は無かった。
「猿だね、猿だよきっと」
 と、猿回しの場に置き忘れてのではないかと、あの娘とまた歩き探してみたものの、見つかる事は無かった。贈る側としても「もういいよ、あきらめよう」とは言いずらいし、贈られる側としても「残念だったね」とも言いずらい。なんとなく二人、
「あ~ぁ」
 な雰囲気なのだが、諸悪の根源はあたしの方なので、今日何回目かの「ごめん」。「じゃあまたりんご飴だね」と、微笑まれ、促される。「えー?なんでー?好きだねー、りんご飴」
「見た目からね、りんご飴はさぁ、見た目がすごくよくない?真っ赤なりんごの周りを水晶みたいに飴が包むでしょ?一番綺麗なお菓子じゃない?お祭りとかに連れて行ってもらってた頃に、すごく憧れて食べたんだけどさぁ、見た目の印象が強過ぎて、味も少し神秘的になる様な気がするもんでさぁ。昔って、大きくて、食べるのが嬉しくなるほど大変だったけどさあ、今手にとると結構小さなもんだよね。りんご小さい!みたいな」

 小学生六年生が一年生の机を見て、感じるような、当たり前の事。当たり前の事をすごく繊細に感動できる娘だった。

 なんとなくほっとしていると、タイミング悪い事にりんご飴屋が店を畳み始めている。
「あははは、今日、いいトコないねぇ!」
 寄席だ。沽券復活は、寄席だな。寄席なら間違えない、寄席なら面白い!半ばヤケで。

「去年は、エロ可愛いとか、キモ可愛いとかいろいろ出てきましたよね」
「僕たちも今年はなにかそんなキャッチコピーみたいの作れば、売れちゃうんじゃない?!」
「すばらしい、よく気が付いた。お前にぴったりの、ありますよ」
「え?なに?なに?」
「エロキモい」
「駄目だよ、そんなん!売れないよ!」
「見てください!この、エッロキモい顔!」
「おい!」

 よし、笑ってら。


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by under-heart | 2007-01-16 19:48 | beyond description